第1話 目覚め

でねー… あれ? あそこにいるの あなたの友達 じゃない? 本当だ。 ごめん、先に行ってて。 あ、そう。 じゃあね。 ウィスティ。 傘もささないで、風邪 引いたらどうするの。 …! 大丈夫?怪我 はしてない? うん、 大丈夫… 私は平気だから 心配しないで。 どうしたの?今日は なんか変じゃない。 …。 …帰って。 え?

お願いだから。 でも… わ…わかった。 ! そんな!

う… う…

う… ここはどこだろ? そうか…。 私は死んだんだ。 !? あなたは誰? ……腕を見せて。 …!

………。 傷だらけ…。 教えて。 私は死んだの? ……いいえ。 あなたは生きてる。 あなたはまだ 生きなければならない。 嫌だ、そんなの。 お願い、 このまま 死なせて…。 沢山あったんだね。 辛い事、苦しい事が。 …。 全て忘れればいい。 家族のことも、 友達のことも、 何もかも…。 うう… 全て忘れなさい。 時が来るまでは。 その時が来るまで… ぐ… あなたは 一体誰なの…。 おやすみ。

グレー・ワールド 第一話 目覚め 猫分儀スミレ Nekobungi Sumire

起きて。 起きてください。 う…ん… 船は港に着きましたよ。 降りて下さい。 おお、そうじゃ。お嬢ちゃんは ここで降りるんじゃったな。 ほれ、早く行かんと 船が出ちまうよ。 ??? クネノマヤ港 クネノマヤ港に着きました お降りの方はお早めに お願いいたします ここ、どこだろう?

船は出港します! お早めにご乗船下さい! 私、なんでここにいるのかな あれ…あの人、どこかで 見たことあるような… ウィスティ様!お久しぶりです! うぐっ! あ、驚かしてしまって すいません。 つい嬉しくって… ?? まぁ、立ち話も何ですから 行きましょう! ちょ、ちょっと  待って!

へ? 私、あなたが 誰なのか知らない んですけど! 知ら ない? それに、ここがどこな のかも分かんないし… ここはクネノマヤの国じゃ ないですか。 クネ…何? ウィスティ様 の国ですよ! ウィスティ様 …って誰? もしかして、何も覚えて いないんですか? 自分の名前すら? えっ? 名前…そう言えば、私の 名前…何て名前だっけ… 長い旅でしたから…こんな 事もあるのかも…う~ん。 …… でも大丈夫!私が全部 分かってますから! ひっ! あなたはクネノマヤ国王の娘にして 後継者、ウィスティ王女様です! えええっ!?

え、え… ちょ、ちょっと 待ってよ。 クネ…とかなんとか、 何わけのわかんない事 言うんですか! ウィスティ様 私、あなたの事 信じないから! でも…。 では、仕方が ないですね…。 私は、どうしようかな…。

! 寒い…。 あなた! !! 私、やっぱり あなたについてく。 ウィスティ様。

よろしくおねがい いたします。 ご心配されなくても、 わからないことがあれば 私がお教えしますから。 あ、ありがとう。 自己紹介を忘れていました… 私は家来のメリッサと申します。 身の回りの面倒な事は 全部私にお任せ下さい。 はあ… 彼らは? ああ、彼らはただの コスプレマニアですよ 王女と言っても、今は 大した力もなくて… 家来は私一人だけです。 そうなんだ。

でも大丈夫!私一人でも しっかりウィスティ様を 守ってみせます。 私、この人のこと 信じていいのかな… どこかで会った気がする のは確かなんだけどな… どうして忘れ ちゃったんだろう… あ、ほらほら 見えてきましたよ! ウィスティ様、ようこそ クネノマヤの街へ! じゃ、私たちはこれで。 また! 迷子にならないように しっかり付いて来て下さいね。 は、はい!

新鮮な紅マグロ! 今が旬だよー! ロワダアの美味しい 野菜はいかがですかー! ウスライズ! 安いよ安いよ! 鉱物・標本は タラバのお店! 卵ー!卵なら 卵屋ミニロオケ! ウィスティ様、こっちですよ メリッサ、待って! 見たことない果物だ… この辺りは街の中心ですから 商店街になってるんですよ。 こっちは花屋さんだ。 ここは何を売って るんだろう? あ、本屋さんがある!

ウィスティ様は 本がお好き なんですか? う、うん。 たぶんそう だったと思う… 後で寄ってみましょうね。 でも先に、屋敷にご案内します。 屋敷? 以前、ウィスティ様とご両親が お住みになっていた場所です。 そんな所があるんだ 急いで行きましょう。 ささ、こっちですよ。 う、うん。 あれ?

ウィスティ様、だめですよ! え? 早くこちらへ! ウィスティ様、あれは 「開かずの扉」です。 「開かずの扉」? ええ。決して触れては ならない扉とされています。 開けることは出来ません。 ウィスティ様もあそこへは 近寄らないで下さいね。 さあ、もうすぐ着きますよ。 ごめんなさい…

これ… 何にも…ないじゃない ええ…実はウィスティ様 がお留守の間に屋敷が 壊されてしまって。 それをこれから復元して いただきます。局長さん! 復元? ども 「呪文局」局長の  ガネジリです。 は、初めまして 小さい さぁ、いよいよ始めますよ。 こちらにどうぞ。 ねぇ、何が始まるの?

さて、今からウィスティ様 にやっていただくのは 「設計詩面」の読み上げです。 「設計詩面」 ええ。 他の人が読んだのでは 何にもならないからねぇ。 ? こちらが ウィスティ様の 屋敷の設計詩面です。 一字一句 間違いなく読んで 下さいね。 それでは 録音開始 します。 見たこと ない文字だ… リバティノモニマ サザフイリカイ… あれ、 読める ノマツトココ イ・ウヤレイ エコム ナデエコ、リソ ハニカ、カシイ ラアセス… うまくいくかなぁ え? 何か問題 でも? いや、実は… 記憶喪失!? うん。 内容を正確に 発音さえ出来れば 大丈夫なはずですが 細かい情報が 欠如するかも しれないな…

ふう おや、終わり ましたか。 デオコロ君、陛下の 声列は正確かね? はい、とても正確 ですよ。これなら問題 ないでしょう。 よろしい。 次は私の番 ですね。 内務省呪文局長の権限により 音声列から物質生成を行う。 キロク・トホナマロコテオ! 再生開始! よし! あれ、ヒモみたいなものが… これ、さっき 私が読んだ 言葉だ! ウィスティ様、しっかり 見ていて下さいよ!

わあ 文字が集まって… 大きな形を作っていく よし、固形化開始! あ ウィスティ様が 読まれた設計 詩面の言葉 その一つ一つに 編み込まれた 「記憶」が音を 通じて広がり… 空間上にその形が 復元されるのです。

すごい! やった、 成功ね! さあ、あなたの家ですよ。 う、うん。 さっきまで何にもなかったのに… 信じられない! うふふ。 メリッサ、あれは何? ?

空の額縁が2枚ある。 絵が復元されて ない… ごめんなさい…。 いえ、いいんです。 また描き直せば いいんですから。 ここには何の絵が あったの? あなたのお父様とお母様の 肖像画…。 ウィスティ様の記憶喪失と 何か関係あるのかもしれませんね。 …………。 ガネジリさんも 来ればよかったのに。 あの人は仕事で 忙しくしてるのが 好きなんですよ。

わぁ、すごく綺麗! この街の夜景は 世界一なんですよ! ふーん…。 ねぇ、メリッサ。 はい? あなたはなんで… その…私の家来に なったの? さぁ…昔から決まって いたことですから。 決まって いたこと?

そうです。ウィスティ様を お守りするのが私の役目。 あなたが私を信じてくださる限り 私は力を発揮出来ます。 信じる限り? ウィスティ様は、 私を信じてくれますか? え… そうだ、メリッサは 私が昔から 知ってる人だ。 思い出せないけど、 それだけは確かだ…。 うん、 あなたを信じる。 では、私はずっと あなたのおそばに。 よろしくね、メリッサ。

ここはどこだろう? メリッサ? メリッサ? ニャハハハ! ! あなた、誰? オレが誰か?そんな事 はどうでもいいのニャ。 お前はウィスティだニャ? お前の秘密を知ってるニャ。 私の秘密? そうニャ。 お前があの日、何をしたのか… あの雨の日に…

サラバ! あ、待って! あなたは一体誰なの? 『開かずの扉』だ。 あ、開けた! う… う… う…。 イヤ…寒い… だめ… やめて! 来ないで!! イヤー!!

ウィスティ様! どうなさいま した?うなされ ていましたよ。 夢を見た… とても怖い夢…。 ただの夢です、 ウィスティ様。 大丈夫……私が おそばにおります。 メリッサ…。 あれ、そういえば… 私が持ってたバッグ…。 ? 何が入ってるんだろう? アルバムだ…

空っぽ…
それ、何ですか?
よく分からない…。
なんでこんなもの 持ってたのかな…。
ウィスティ様、 もう寝ませんと。
う、うん。
おやすみなさい、ウィスティ様。
おやすみなさい、 メリッサ。
…あの扉の向こうには 何があるんだろう?
私はこれから どうなるんだろう…